本記事では、「ご愁傷様です」は正しい敬語か?について解説します。
「ご愁傷様です」は正しい敬語?
社会人として一人前になるためには、さまざまなマナーや礼儀をマスターする必要があります。
それらはある程度会社に入社する時に研修として学ぶことがほとんどですが、その後の自習や復習をしっかりしていないと、いざという時に全く役に立たない結果になってしまうことも少なくありません。
目上の方と接することの多いビジネスパーソンにとって、敬語表現は確実にマスターしておきたいスキルの1つです。
ですます調の丁寧語や謙遜語のように自分を下にして相手を敬う謙譲語、そして、相手を立てて敬意を示す尊敬語など、日本語における、相手を敬うための言葉遣いは多岐にわたり、正しい使い方が決められているものの、完璧に使いこなせている人はほとんどいません。
特に、冠婚葬祭など、日常的に発生しないライフイベントで用いられるような特別な言葉などは、あまり意味も考えずに、なんとなく使用しているという方も多いのではないでしょうか。
特に日本人は、はるか昔から縁起を担ぐことを大切にしてきた歴史があるため、このようなライフイベントで用いるべき言葉や用いてはいけない言葉などの線引きやルールがしっかりとしています。
今回は、お葬式の場面で使用する「ご愁傷さまです」という言葉に焦点を当てて、その意味と使用方法を改めて考えてみましょう。
「ご愁傷様です」という言葉は、主に、大切な人を亡くした遺族の方々に対して、お悔やみの気持ちを伝えるための表現です。
さらに付け加えると、このお悔やみの気持を少しもじり、気の毒に思っている気持ちを、からかいの意を持って相手に伝えるという意味も持っています。
それは、「残業するなんて、ご愁傷さま」というように、ドンマイというような軽いニュアンスで使用します。
どちらかといえば、前者よりも後者のからかい文句の方が日常的に耳にする機会が多いため、「ご愁傷さま」の正しい意図を理解していない人にとっては、そちらのほうがより深く世に浸透している傾向があります。
そのため、遺族に対してお悔やみの表現をする時に、「ご愁傷様です」という言葉を使うのを敬遠してしまう人も出てきてしまっているのです。
しかし、「ご愁傷様です」という言葉を1つ1つ分解して考えるとその不安をなくすことができます。
そもそも「愁傷」という言葉は、憂いの気持ちを表す「愁」と私達もよく知っている創傷のことを指す「傷」という言葉でできています。
その2つの言葉を組み合わせると、「心の傷を悲しくおもう」つまり、相手の傷心を気の毒におもうという意味になります。
そして、その言葉に、相手への敬意を示す「御」や「様」をつけています。
つまり、「ご愁傷様です」という言葉だけで、表現できる限りの最大限の敬意を示しているということになります。
つまり「ご愁傷様です」という言葉はシンプルなたった1言で、相手を思いやる気持ちを伝えることの出来る素晴らしい言葉なのです。
しかし、どんなに素晴らしい言葉でも使用方法を間違えてしまうと無駄になってしまいます。
「ご愁傷さまです」という言葉を、お葬式などで使用する場合は、その言葉をかける対象が身内以外であるということが大前提となります。
会社の上司、部下、同僚、そして友人などの人に対して使用するのは問題ありませんが、身内に対して使用してしまうと、少し他人行儀なニュアンスになってしまい、適当な言葉とは言えません。
あえてかしこまった言い方をせず、自分の気持を素直に言葉にすることが出来るのが身内の特権です。
お葬式という場でも遠慮することなく、きちんと向き合うことで、お悔やみの気持ちを表現しましょう。
また、対面で「ご愁傷様です」と伝える場合は、その後に長々と話をしないことも大切なポイントです。
大切な人を亡くした遺族の方は、心の整理もできてない方が多く、人と対応するだけでもいっぱいいっぱいになってしまう人もいます。
そのため葬儀の場では無理に会話を引き延ばそうとせず、落ち着いた時に再度連絡をするなどの配慮をするようにしましょう。
また、「ご愁傷さまです」以外にも、亡くなった人を悼み、お悔やみの気持ちを表現する言葉があります。
1つ目は「お悔やみ申し上げます」です。この言葉は亡くなった方の遺族に対して、弔電などの文章や、直接口頭などで伝えることの出来る表現です。
2つ目は「追悼の意を表します」です。
この言葉は、亡くなった方のことを想い心を痛めているという意思表示の言葉であり、基本的には弔電やメール、手紙などの文章中で使用します。
直接口頭で伝えることはマナー違反となるので、遺族への挨拶の際に使用しないように注意しましょう。
そして3つ目が「ご冥福をお祈りいたします」です。
この言葉は、亡くなった方の、死後に訪れる幸福を祈っていますという意を表する言葉です。
そのため、亡くなった方本人に対して向けるのが正しい使用方法となり、遺族に対して使用するのは不適切とされています。
これら3種類の言葉のように、表現方法はさまざまですが、使用できるシーンが決まっているものもあります。
下手に知ったかぶりをしてしまうと、遺族や故人に対して失礼になってしまう可能性があるため、きちんと理解して使い分けるようにしましょう。
これらのお悔やみの言葉は、可能な限り直接出向いて言葉を送るのが望ましいと言えます。
しかし、時にはどうしても都合がつかず、葬儀に参加できない場合も出てきてしまいます。
そんな時は、弔電やメール、手紙、そして電話などで気持ちを伝えることができます。
弔電やメールなどの文章で気持ちを伝える場合は、前述の「お悔やみ申し上げます」という言葉を使用するのが望ましいとされています。
「ご愁傷さまです」はあくまでも口語表現のため、文章で使用することは避けるのが無難です。
また、文章は口頭で表現するよりも、正しく相手に気持ちが伝わりづらいというデメリットがあります。
そのため、可能な限り誤解を招くような表現を避け、シンプルにお悔やみの気持ちを表現するように心がけましょう。
しかし、やはり言葉を口にして相手に伝えるということはとても大切です。
メールなどはとても便利で、簡単に済ませてしまうことができますが、可能ならば数分だけでも時間をとって、電話で想いを伝えるようにしましょう。
それは、文字で見て理解するよりも、声で聞いたほうが心に届く場合もあるからです。
ちなみに、自分が「ご愁傷様です」という言葉をかけられる立場になったら、どのような返答をするのがマナーとして正しいかご存知でしょうか。
多くの方がとっさに答えてしまいがちなのが「ありがとう」ということばですが、不幸が合った場合に対して、本来「ありがとう」という言葉は避けるべきとされています。
しかし、遠い所からわざわざ来てくれた人や、目上の方からお声をもらった場合には、「ご丁寧にありがとうございます」と感謝の意を伝える場合もあります。
そして「ご愁傷様です」に返す言葉として最も適切なのは「恐れ入ります」です。
この表現は、口頭だけでなく、メールなどの文章の返事としても使用できる、使い勝手の良い言葉です。
相手のお悔やみの言葉に何と返していいのかわからない場合などは「恐れ入ります」と答えるようにしましょう。
例文
例文(上司あて)
- この度はご愁傷様でございます。
I extend to you my heartfelt condolences. - この度はご愁傷様です。
Please accept my sincere sympathy. - この度はご愁傷様です。突然のことで驚いております。心からお悔やみ申し上げます。
I am surprised at the sudden thing. I extend to you my heartfelt condolences.
上司など目上の方にお悔やみの言葉をかける場合は、上記のようにシンプルなものが1番です。
変に長々と言葉をかけてしまうと、相手に対して失礼になるリスクが高まるため注意しましょう。
たった1言でも心から伝えることができれば、問題ないでしょう。
【上司の両親が亡くなった時のメール全文】
この度は、突然のことでたいへん驚いています。
This time, I am very surprised at the sudden thing.
ご母堂様のご逝去を悼み、心よりお悔やみ申し上げます。
I extend to you my heartfelt condolences.
本来であれば弔事に伺うべきところ、略儀ながらメールにて失礼致します。
Normally, I should ask for condolences, Excuse me by e-mail.
お力落としのことと存じますが、ご無理をなさらぬようご自愛ください。
I think it’s a loss of power, Please love yourself so as not to overdo it.
前述の通り、「ご愁傷様です」は基本的に口頭で伝える言葉のため、メールなどの文章で送る場合は「お悔やみ申し上げます」を使います。
このようなお悔やみメールには使用してはいけない言葉がたくさんあります。
そのため、口頭で伝えるのと同様に、余計な文章を書かないようにすることが大切です。
また、葬儀の当日に送る場合は、相手が忙しいことを考え、「返信は不要です」と書いておくと、相手を思いやる心遣いが感じられてより良いでしょう。
例文(部下あて)
- ご愁傷様です。どうか気を強く持ってね。何か私に出来ることがあったら遠慮なく言ってね。
Please accept my sincere sympathy.Please don’t lose power.Feel free to tell me anything I can do.
会社の一員として、礼儀的にお悔やみの言葉を送る場合は、上司と同じようにしっかりとした文言の方が適切と言えます。
しかし、関係性が近かったり、仲が良い部下には、上記のように柔らかい表現でも問題ありません。
先輩として、傷心の部下をいたわる言葉選びを心がけるようにしましょう。
例文(同僚あて)
- この度は本当にご愁傷様。ご冥福を心からお祈りしているよ。どうかご家族の皆様もお力落としのないように。
I extend to you my heartfelt condolences. Please do not let your family lose their strength. - この度はご愁傷さまです。急なことで大変だったね。なんて言っていいのか言葉が見つからないけど、お悔やみ申し上げます。力になれることがあったら何でも言ってね。
Please accept my sincere sympathy. It was hard because of a sudden thing. I can’t find a word to say, but I’m sorry. Tell me anything you can help.
プライベートで友人関係を築けているような仲の良い同僚には上記のようにある程度砕けた言い方でも問題ありません。
大切なことはお悔やみの気持ちを伝えるということなので、相手のことを考え、自分の気持を素直に伝えると良いでしょう。
まとめ
改めて、「ご愁傷様です」が表す心情を考えてみると、最上級に相手に敬意を払ったお悔やみの言葉ということがわかります。
使用することが少ないことが1番ですが、生きている人間には必ず死が訪れるように、避けては通れないものでもあります。
いざという時に、しっかりと気持ちを伝えられるように、これを機会にお悔やみの言葉についての知識を深めておきましょう。
とはいえ、大切なことは故人を悼む気持ちと、遺族の方への思いやりです。
たとえ言葉遣いを間違えたとしても、気持ちがしっかりこもっていれば問題ありません。
もちろん対面して口頭で伝えるのが最良ですが、メールや手紙でもマナー違反にはなりません。
しかし、その場合はきちんと後日、時間をとって改めて挨拶するなどの配慮は合ったほうが良いでしょう。
また、お悔やみの場では、相手の心境を考えないような、故人が亡くなった原因や理由をお悔やみの場で聞くことはタブーとされています。
長話をしないようにと再三お伝えしているのは、このような話題にならないように配慮する必要があるという意味もこもっています。
きちんとマナーを守って、社会人として恥ずかしくないようにその場に臨みましょう。
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