本記事では、「ご一緒します」は正しい敬語か?について解説します。
「ご一緒します」は正しい敬語?
ビジネスシーンにおいては、「一緒に行きませんか?」とか「一緒にどうですか?」と誘われることが多々あります。
そんな時、「ぜひ一緒に!」というニュアンスの返答をする際には、どんなフレーズを使うのが正しいのでしょうか?
よく耳にするフレーズだと、「ご一緒します」があります。
「ご一緒します」に含まれている「一緒」は、自分と対等な相手に対して使う言葉です。
ここに「ご」という接頭辞をつけることによって丁寧な雰囲気を出していますが、「ご」をつけて「ご一緒に」にしても、相手を立てる尊敬語になりません。
また、自分をへりくだることで相手を立てる謙遜語にもなりません。
「ご一緒に」は、あくまでも
- 「一緒に行きましょう」
- 「一緒にやりましょう」
というニュアンスを持つフレーズを丁寧に表現している丁寧語です。
そのため、ビジネスシーンにおいては、自分よりも目上の人に使うのは失礼となります。
間違っていると気づかずに使っているケースが多いフレーズの一つなので、もしかしたらこれまでにも目上の人に対して使ったことがあるかもしれません。
しかし、「ご一緒します」と同じ意味を持つフレーズはいくつかあるので、これからは相手との関係によって、正しい使い方をしたいものです。
それでは、「ご一緒します」を目上の人に対して使う場合には、どんなフレーズにするのが正解なのでしょうか?
「ご一緒に」の部分は同等の人に対して使う丁寧語です。
もしも「させていただく」という、謙譲語を使って「ぜひご一緒させていただきます」と言うフレーズにすれば、これは自分を下にして相手を立てるニュアンスになるため、目上の人に対して使っても、失礼には当たらないでしょう。
「一緒に」という言葉を使いたいなら、フレーズ内の他の部分で敬意を盛り込むのがおすすめです。
この「させていただく」の使い方については、簡単そうで意外と難しいものです。
謙譲語として「させていただく」が使えるのは、相手の許可を必要とする場合やその行為をすることで恩恵を受けられると自分が感じている場合、という条件が付いています。
「ご一緒させていただきます」では、相手の許可があって初めて同行できるという点、そして同行することによって自分が恩恵を受けられると感じているという点において、敬意を込めた言い方としては正しいと判断できます。
ちなみに、「させていただく」の間違った使い方としては、「この書類を拝見させていただきます」があります。
「確認させていただきます」ならOKですが、「拝見させていただく」だと、
「拝見する」という謙譲語に、「させていただく」という謙譲語が重なって、二重敬語となってしまいます。
そのため、使い方としてはNGです。
「ご一緒します」を丁寧な文末にすると、「ご一緒いたします」となります。
「ご一緒させていただきます」と同義語となりますが、この二つにはニュアンスの違いがあるため、正しく意味を理解していれば、シーンに合わせて使い分けができます。
例えば、
上司「来週のセミナー、あと1人参加できるのだけど、君も一緒にどう?」
と聞かれた場合には、上司の許可があって初めて自分が参加できるので、正しい答え方としては
「はい、ご一緒させていただきます」
が良いでしょう。
一方、上司から
「来週のセミナー、君も一緒に来なさい」
と言われた場合には、上司の許可が必要というわけではなく、上司からの業務命令です。
そのため、この場合の正しい答え方としては
「はい、ご一緒いたします」
が適切です。
「ご一緒します」の同義語には、他にも
- 「お供します」
- 「お供させてください」
- 「お供させていただきます」
- 「ぜひお供いたします」
など、「お供」という言葉を使う言い方があります。
お供という言葉は、目上の者に目下の者がついていくというニュアンスがあるため、上司など目上の人に対して使っても、失礼にはあたりません。
それでは、自分から相手に対して「一緒にどうですか?」と誘う場合には、どのような使い方をすれば良いのでしょうか。
「ご一緒します」を単純に質問形に変えて「ご一緒しませんか?」というのは、一見すると丁寧な感じがしますが、「ご一緒」は丁寧語、「しませんか?」も丁寧語なので、敬意を表す要素が全く入っていません。
そのため、同僚や部下に対して使うことはOKでも、上司のように目上の人に対して使う際には、敬意が十分に表現されていないという点でNGです。
目上の人に「一緒にどうですか?」と聞くなら、
「一緒にいらっしゃいませんか?」とするのがおすすめです。
「いらっしゃる」は尊敬語なので、目上の人に対して使っても失礼にはあたりません。
「行く」という言葉の尊敬語の一つである「おいでになる」を使って、「おいでになりませんか?」とするのもOKです。
ただし、「おいでになりませんか?」には「一緒にどうですか?」というニュアンスが含まれていません。
そのため、「おいでになりませんか?」だけでは、あなたが相手に対して「一緒に行きませんか?」と誘っているのか、「行ってみたらどうですか?」と誘っているのかが分かりにくいかもしれません。
一緒に行きましょうというニュアンスで使うのなら、「一緒にいらっしゃいませんか?」の方が分かりやすいでしょう。
「一緒に行く」というニュアンスを持つ同義語には、「同伴する」という言葉もあります。
これは、目上の者が目下の者と一緒に行くという表現方法ですが、「ご同伴」とすれば、目上の人に対しても違和感なく使うことができます。
- 「明日のパーティには、奥様ご同伴でお越しいただけたら幸いです。」
のような使い方をすれば、相手に失礼になりませんし、とても自然な使い方ができるでしょう。
上司「明日の会議、君も一緒に来なさい。」
自分「はい、ぜひ同伴させていただきます。」
と言うのは、NGです。
目上の者が目下の者に対して使う「同伴」という言葉を使うのは間違いで、「させていただきます」という謙譲語を添えてもNGです。
この場合には、
上司「明日の会議、君も一緒に来なさい。」
自分「はい、ぜひお供させていただきます。」
にするのが良いでしょう。
「ご一緒します」を英語で表現するなら、以下のとおりです。
- 「Thank you for letting me come with you.(ぜひお供させてください。)」
- 「Thank you for inviting.(誘ってくれてありがとうございます。)」
- 「Sure!(ええ、もちろん!)」
- 「Absolutely!(喜んで!)」
「一緒」という言葉を英語にすると「together」をイメージする人は多いのですが、「ご一緒します」のフレーズで、togetherを使うことはあまり多くはありません。
「一緒にどうですか?」と誘う場合でも、「Would you like to go with me?(私と一緒にいきませんか?)」のように、「私と一緒に」のフレーズを使うのが一般的です。
歴史の中でもこのフレーズを使う機会は多く、時代劇のテレビドラマや映画、また子供向けの絵本にも登場します。
例えば、日本人なら誰もが知っている桃太郎のお話では、動物たちが桃太郎に「一緒に鬼ヶ島へ鬼退治に行かないかい?」と誘われて、「ぜひお供します!」と答えています。
「お供する」は目下の者から目上の者に対して使う言葉なので、動物たちが桃太郎に対して使うのは、正しい使い方をしていると言えるでしょう。
例文
ビジネスシーンにおいて、「ご一緒します」というニュアンスのコミュニケーションを取ることは、少なくありません。
しかし、「ご一緒します」のフレーズには敬意の要素が含まれていないため、目上の人に対して使う場合には注意が必要です。
具体的に、どんな風に使うのが正解なのでしょうか?
例文(上司あて)
上司に対して「ご一緒します」というニュアンスで自分の意思を伝えるなら、尊敬語を使うという方法と、謙譲語を使う方法とがあります。
どちらも相手を立てることになるので、尊敬語を使っても謙譲語を使っても、使い方としては問題ありません。
具体的にどんな言い方をすれば上司に対して失礼に当たらないのでしょうか。次のような使い方がおすすめです。
- 「ぜひご一緒させてください。」
- 「一緒に参ります。」
- 「ぜひお供させてください。」
- 「お相伴させてください。」
上司から誘われたことに対して、とても嬉しいという気持ちを加えるなら、「喜んで」を文章に付け加えると良いでしょう。
そうすることで、「ぜひ一緒に行きたい」「誘ってもらえてとても嬉しい」という気持ちを表現できます。次のように使えます。
上司「明日の会議、君も行くかい?」
自分「はい、ぜひ喜んでお供させていただきます!」
「ご一緒します」というフレーズは、対面や電話など、口語の際には上記のように使うことができます。
しかし、メールなどの文書においては、「同行してまいります」という使い方をするのがスマートです。
「同行する」は「一緒に行く」の同義語ですし、「まいります」という謙譲語を使うことで、目上の人に対して使っても失礼にはなりません。
文章で使うのなら、「同行してまいります」のフレーズを覚えておくと、とても使い勝手が良いのでおすすめです。
英文のメールでは、以下のように、まずは行くのかどうかの意思表示を明確にする書き方がおすすめです。
- 「Sure!I’d be happy to.(もちろんです。喜んでお供いたします。)」
- 「Absolutely!Thank you for letting me go with you!(はい!一緒に同行させていただき、ありがとうございます。)」
例文(部下あて)
部下に対しては、「ご一緒します」というフレーズをそのまま使っても、失礼には当たりません。
丁寧な表現なので、不自然でもないでしょう。
もしも部下が自分よりも年齢が若く、自分が指導する立場にあるのなら、「ご一緒」と「ご」をつけずに「一緒に行きましょう」でも問題はないでしょう。
社内の立場という点では自分の方が上だけれど、年齢は部下の方が年上という時には、部下だからといってあまり偉そうな雰囲気を出すのはできるだけ控えたいものです。
そんな時には、「ご一緒します」と「ご一緒」の言葉をつけることで、「一緒に行きましょう」よりも一層丁寧な雰囲気となります。
年上の部下に対して使っても失礼にあたりませんし、相手に不快感を与えることも少ないのではないでしょうか。
部下に対して「ご一緒します」を英語で表現するなら、
- 「No problem」
- 「I will」
- 「Sure」
- 「Absolutely」
- 「I’d happy to.」
などのフレーズを使います。
部下「Is it possible for you to go to XXX with me tomorrow?
Because I’m not sure I can handle this by myself.
(明日、XXまでご一緒していただくことは可能でしょうか?私一人では対処できるか不安なので。)」
自分「No problem, I will.(ええ、もちろんです。ご一緒します。)」
のように使います。
例文(同僚あて)
同僚に対して「ご一緒します」を使うのは、使い方の点では間違っていません。
とても丁寧な言い方なので、同僚から「ご一緒します」と言われて激怒する人はいないでしょう。
しかし、職場においては同志ともいえる同僚に対して「ご一緒」の「ご」を付けたり、「します」と言うのは、丁寧過ぎると感じる人は多いのではないでしょうか。
そのため、シチュエーションによっては、カジュアルな言い方にすることで、お互いの親近感を高められます。
同僚「明日のセミナー、一緒に行かない?」
自分「ええ、ぜひ一緒に!」
英語で表現する場合でも、部下に使う場合と同じようなフレーズを使うのがおすすめです。
同僚の場合には、失礼に当たらない丁寧さは必要ですが、丁寧過ぎるとお互いの距離感が開いてしまうため、丁寧過ぎずに親近感がわくようなフレーズを使うことも大切です。
まとめ
「ご一緒します」は丁寧語なので、自分と対等な立場にある人に対して使います。
上司など目上の人に対しては、「ご一緒いたします」「ご一緒させていただきます」「お供いたします」などのフレーズを使うのがおすすめです。
コメント