本記事では、「ご理解いただけたでしょうか」は正しい敬語か?について解説します。
自分が新人研修やプレゼンテーション、企画会議の司会をしている際、沢山の説明をする必要がありますが、相手に対して自分の意図がどこまで伝わっているかを確認する際、「ご理解いただけたでしょうか」等の言葉を使って相手の反応を見る機会があります。
相手の理解度を確認する際は「わかっていますか」「理解できてますか」「次に進んでも問題ないですか」など、聞き方はいくつかありますが、実際には正しい日本語を話せているかと疑問を持つ事もあります。
特に、最近は造語がいろいろと出来ているため、知らずに二重敬語や間違った意味で使用しているという可能性も少なくありません。
そのため、正しい日本語をしっかりと理解し、相手に対して教養を見せる必要があります。
この教養がしっかりしていないと、相手からの印象がかなり違う事にもなりますので、分からない場合はしっかりと勉強しましょう。
「ご理解いただけたでしょうか」は正しい敬語?
「理解」とは物事の道理や道筋が正しくわかる事を示しており、意味や内容を自分の知識として飲み込むことを表しています。
他にも、気持ちや立場などを察する際にも「理解」を使うことができ、「彼女の現状を理解する」などの使用方法があります。
「理解」を使う場合、自分が使用する場合は相手のこと(気持ち/立場/環境/説明など)に対して使用する言葉ですが、相手に対して使用したい場合は、自分の気持ちや立場、説明などを相手に理解して「もらう」必要があります。
「ご理解いただけたでしょうか」を紐解くと「(自分の説明などが)理解してもらえたでしょうか」という意味になり、これは相手に対して自分の説明はちゃんと伝わっているかを確認する言葉になります。
さらに言葉を分けますと、「ご理解いただく」という言葉は「理解してもらう」を尊敬語に変換した言葉であり、正しい敬語表現となります。
そして、「~たでしょうか」には相手に対しての疑問を投げかける言葉となり、二つの言葉を合わせて、「理解してもらえたでしょうか」という意味となります。
そのため、歴史的に見ても「ご理解いただけたでしょうか」は正しい日本語として機能しており、ビジネスシーンや日常会話の中で問題なく使用できる言葉でもあります。
なお、相手に対しての理解度を計るための類義語として、「おわかりですか」や「問題ございませんか」「ご了承いただけますか」などの言葉もあります。
「おわかりですか」は「ご理解いただけましたか」の完全な類義語であり、意味合いもほぼ同じ言葉となります。
しかし、「理解する」の方がより丁寧な印象を与えますので、ビジネスシーンの際は「おわかり」よりも「ご理解」を使用するようにしましょう。
「問題ございませんか」も「ご理解いただけたでしょうか」と同じような意味を持つ言葉です。
基本的に、自分の説明や解説に対して「理解できているか」を確認する際に使用しています。
「ご理解いただけたでしょうか」の方は相手に対して理解しているかというストレートな表現ですが、「問題ございませんか」は質問や不明点がないかも含めて確認している言葉です。
そのため、難しい説明や解析の他に、相手に対して質問等がないかを確認したい場合は、「ご理解」よりも「問題ないか」と聞くようにしましょう。
なお、目上の人に対して「問題ございませんか」は使用する事はやめておきましょう。
これは目上の人に対しては失礼な言葉になりますので、質問等がないかを確認したい場合、「ここまででご質問はございませんか」とストレートに聞くようにしましょう。
「ご了承いただけますか」は、自分の説明や解析に対する総まとめをする際に使用する言葉です。
特に契約や約束事に関して、相手に納得したかを確認する際に使用されます。全てを説明し、約束事に対して「ご理解できましたでしょうか」とも使用できますが、印象としては良くありません。
少し上から目線に聞こえてしまうため、「ご理解」よりも「ご了承いただけますか」と聞く事が正解となります。
「理解」を確認する場合のほとんどが、自分から相手に対して説明をしている時です。
新人に業務を教えたり、企画のプレゼンを行っている際に、聞いている人に対して「理解」できているかを確認するかと思います。
その際の確認方法で、今後の会話がスムーズになったり、相手からの質問なども来たりするようになりますので、全てに対して「ご理解ただけたでしょうか」と確認するのではなく、それぞれふさわしい言い方で相手の反応をうかがうようにしましょう。
例文
相手に対して自分の意見を理解してもらいたい場合、「ご理解いただけたでしょうか」以外にも沢山の言い方があります。
- 「ご理解くださいませ」
- 「ご理解をお願いいたします」
- 「ご理解いただきたく存じます」
- 「ご理解いただきますようお願い申し上げます」
- 「ご理解くださいますようお願い申し上げます」
- 「ご理解のほどよろしくお願いします」
- 「ご理解いただければ幸いです」
これらすべてが相手に対して「理解してほしい」と訴えている言葉ですが、どの言葉をどの場面で使用すればいいのか、迷うと思います。
ご理解くださいませ
「ご理解くださいませ」は「ご理解」と「くださいませ」の2つの言葉に分ける事ができますが、「くださいませ」は「してほしい/してくれ」と紐解く事ができ、自分から相手に対してお願いするというよりも懇願する気持ちが強く出ています。
ビジネスシーンで相手にお願いする際に「ご理解ください」とお願いする事は問題ないですが、目上の人に対しては「ください」と懇願する言い方は間違った日本語となります。
ご理解をお願いします
「ご理解をお願いします」はストレートな表現のため、誰に対しても使用できる言葉です。
特にNGな場面もありませんが、「お願いします」よりも丁寧な言葉や謙遜語もあるため、使いどころが難しい言葉でもあります。
ご理解いただきたく存じます
「ご理解いただきたく存じます」は「ご理解」と「いただきたく存じます」の言葉が合わさった言葉ですが、紐解くと「理解してほしいと思う」となります。
「いただきたく存じます」が「してほしいと思う」を丁寧語に変換した言葉であり、よく二重敬語として間違えやすい言葉ですが、二重敬語ではありませんので安心して使用できる言葉です。
相手に対して丁寧にお願いする言葉のため、お客様相手にも取引先相手にも、目上の人へのメールでも使用する事ができます。
ご理解いただきますようお願い申し上げます、ご理解くださいますようお願い申し上げます
「ご理解いただきますようお願い申し上げます」「ご理解くださいますようお願い申し上げます」も、相手に対して理解をお願いする言葉です。
一見、沢山の敬称が含まれるため、二重敬語のような印象を与えていますが、この「いただきますようお願い申し上げます/くださいますようお願い申し上げます」は問題なく使用できる正しい日本語です。
「ご理解いただきますよう/くださいますよう」には「理解してください」となり、「お願い申し上げます」は「お願いを言います」の謙遜語になります。つまり、「理解してほしいと私は言います」という意味となりますが、目上の人に対してやビジネスの際に使用できる言葉です。
ご理解のほどよろしくお願いします
「ご理解のほどよろしくお願いします」は、「ご理解くださいますようお願いします」よりもさらに丁寧な表現方法です。
目上の人に対しても使用する事ができる、比較的使いやすい言葉表現でもあります。
なお、この「ほど」は漢字では「程」と表しますが、文章を書く際はひらがなでも失礼には当たりませんので、どちらで表記されても問題ありません。
ご理解いただければ幸いです
「ご理解いただければ幸いです」は、「してください」の丁寧な表現です。
「いただければ」は「してもらう」の言葉を変換したもので、「ご理解してもらえると、(私は)幸せです」という言葉の丁寧な言い方となります。
ご質問/ご不明点はございませんか
遠まわしになりますが、こちらも「理解しているか」を聞いている言葉となり、質問や不明点がない場合、相手は自分の説明を理解していると解釈できます。
「ご理解いただけたでしょうか」よりも「ご質問/ご不明点はございませんか」の方が相手に寄り添っている印象を与えるため、自身の説明や解説が難しい分類だと感じた場合、上記のように質問がないかを聞いた方が良い印象です。
ビジネスの世界では日本語だけではなく、英語でメールを作成するシーンもあり、その際にも「理解をお願いする」事は沢山あります。
その際に、相手に対して理解をお願いする場合、「Do you understand?(わかりました?)」と相手に尋ねると、ビジネスの観点からは失礼に値します。
「Do you understand?」は上から目線の言い方です。
「わかったか?」「理解してる?」という表現となり、丁寧な言葉遣いが必要なビジネスシーンでは基本、使用しません。
相手に対して「理解をお願いする」場合は、「Does that make sense?」か「Am I making sense?」だと丁寧な言い方となりますので、こちらを使用しましょう。
その他にも、「Do you have any questions about what I said?(私の言ったことに何かご質問はありますか?)」と相手に寄り添うような言い方で対応できるでしょう。
例文(上司あて)
目上の人や上司に自身のプレゼンなどをする場合、どうしても進捗状況を確認しないといけない場面が出てきます。
その際に、「ご理解」を使用して相手にうかがう必要があります。
「ご理解いただけましたでしょうか」
こちらの言葉で理解できているかの確認もできますが、目上の人に対しての言葉のため、謙遜語を使用した方が良いです。
- 「ご理解いただきますようお願い申し上げます」
- 「ご理解の程よろしくお願いいたします」
- 「ご理解いただければ幸いです」
こちらの言葉がへりくだった印象を与える文章となりますので、目上の人に対して当てる場合は、このように伝えましょう。
例文(部下あて)
上司から部下にあてて「理解」を確認する場合、「ご理解いただけたでしょうか」はあまり使われない言葉です。
理由としては、「いただけたでしょうか」は目上の人から部下にあてて言う日本語ではないからです。
「いただけたでしょうか」は疑問形の言葉です。
目上の人から部下の人に理解をお願いする場合、「理解できましたか」と直接お願いするか、「理解の程よろしくお願いします」のように「理解」を頼むことが正解です。
また、部下に質問や不明点がある可能性があるため、「質問等ありますか」や「不明点があれば教えてください」のように、質問しやすい環境を整える方法もあります。
例文(同僚あて)
自分と同じ会社の同僚やプロジェクトメンバーに対して「理解」の確認をしたい場合、「ご理解いただけましたでしょうか」で問題ありませんが、状況により、この言葉は使用しない方が良い場合があります。
「ご理解いただけましたでしょうか」は、相手に現状の理解度を確認する際に使用する言葉です。
そのため、説明や解説をしている場合に使用する機会は沢山ありますが、理解できたかを確認するよりも、理解をお願いしたり、質問や不明点を確認した方が良い場面もあります。
特に、会議などが長引いている場合や沢山覚えないといけない事を説明する場合は、「理解できましたか」や「わかりましたか」などで確認しましょう。
もちろん、上司あての例文で説明した通り、質問や不明点を確認する言い方でも問題ありません。
まとめ
「ご理解いただけたでしょうか」は相手に対して理解できたかを確認する言葉で、正しい日本語です。
しかし、ビジネスシーンの場合、理解してもらっているかを聞くよりも、理解をお願いするシーンの方が多いです。
そのため、「ご理解いただきますようお願いします」や「ご理解くださいますようお願い申し上げます」のようにお願いをした方が、相手に対して良い印象を与えます。
また、説明の内容次第では相手側から質問をしやすい環境を整えた方が良い場面もありますので、質問はないかを聞いた方が良いシーンもあります。
相手に対して「理解しているか」を聞いているため、確認をする際は目上の人なのか、そうでないのかを確認し、適切な言い回しをする必要があります。
「ご理解」から続く言い方は沢山存在します。そのため、正しい日本語を覚えて、相手に悪い印象を与えないよう気を付けつつ、「理解度」を確認しましょう。
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