本記事では、「大変参考になりました」は正しい敬語か?について解説します。
「大変参考になりました」は正しい敬語?
ビジネスシーンでよく耳にするフレーズの中には、とても丁寧な表現だったとしても、目上の人に対して使うのはNGだったり、目下の人に対して使うと違和感がある言葉がたくさんあります。
「大変参考になりました」も、その一つです。
「大変参考になりました」は、「参考になりました」に「大変」という言葉を足すことによって、相手への感謝の気持ちを伝えています。
相手に何かを質問して答えてもらった時に、感謝の気持ちとして、「大変参考になりました。教えていただいてありがとうございます。」というニュアンスで使われることが多いでしょう。
また、「大変参考になりました」には、相手が言ったことに対して納得しました、という意味もあります。
特に、目上の人から何かを教えてもらった時には、「納得できたし、理解できました。教えてくれてありがとうございます。」というニュアンスで使われます。
「大変参考になりました」のフレーズは、尊敬語や謙遜語の要素はありません。
つまり、敬語ではなく丁寧語に分類できます。
「大変」という丁寧な言葉をつけているので、目上の人に対して使っても、敬意が足りないと激怒されてしまうことはないでしょう。
しかし、この言葉のフレーズは使う時と場合、そして相手によってはとても失礼になってしまう可能性があるため、使い方には注意しなければいけません。
「大変参考になりました」というフレーズはとても丁寧な言葉なので、ビジネスシーンでは大活躍してくれます。
しかし、相手が誰かによっては、このフレーズが失礼に当たる可能性があるので、注意したほうが良いでしょう。
「大変参考になりました」に含まれている「参考」という言葉は、自分の考え方を決める際に、他人の意見を手掛かりにする、という意味があります。
つまり、自分自身の考え方が大前提となっていて、他人の意見をそこに少し足しにするかどうかを決める際に使われる言葉です。
例えば、「生活の足しにする」という言葉にもあるように、何かの足しにするというニュアンスを持つ言葉は、相手側にとってはあまり良いイメージがありません。
そのため、ビジネスシーンで目上の人に「大変参考になりました」を使ってしまうと、目上の人の意見を自分の考えの足しにする、という表現と受け取られる可能性が高いです。
そのため、目上の人に対しては、「大変参考になりました」は使わない方が賢明です。
それでは、目上の人に対しては、「とても良い意見でした。勉強になりました。ありがとうございます。」という気持ちをどのようなフレーズで表現するのが良いのでしょうか。
目上の人に対しては、「大変勉強になりました。どうもありがとうございます。」のように、「参考」という言葉ではなくて、「勉強」という言葉を使うのがおすすめです。
勉強という言葉には、知識が増えるとか、素晴らしい経験ができたというニュアンスがあり、目上の人に対して使っても失礼には当たりません。
それに、ビジネスシーンにおいて目上の人に質問し、何かを教えてもらった時には、大前提となる自分の考えに追加・加味されるというよりも、知らなかったことを学べる機会が多いものです。
そのため、「大変勉強になりました。」のフレーズを使っても、不自然になることは少ないでしょう。
歴史の中でも、主君から指導を受けた家臣は「本日は勉強させていただきました」などのフレーズで、感謝の気持ちを述べてきました。
時代劇のテレビドラマや映画などでも、「勉強させていただきました」という言葉を耳にすることはよくあります。
「大変参考になりました」は、自分よりも目上に当たらない人に対しては、使っても失礼にはなりません。
部下や同僚に対して使うことはOKです。
しかし、この場合でも、自分が全く知識のなかったことを教えてもらった際には、「大変参考になりました」ではなくて、「勉強になりました」の方が適切かもしれません。
「大変参考になりました」と同じニュアンスを持つ同義語は、いくつかあります。
もしも「参考」という言葉を使うことに抵抗がある時には、同じニュアンスを持つ別の言葉に置き換えるという方法もあります。
「大変参考になりました」の同義語には、目上の人に使っても失礼に当たらない「大変勉強になりました。」がある他、「大変学ばせていただきました。」というフレーズもおすすめです。
これらは、上司などの目上の人に対して使っても失礼には当たりません。
しかし、何を教えてもらったのか、その内容によっては、「大変勉強になった」「大変学ばせていただいた」という表現で感謝の気持ちを伝えることが、大げさだと感じられたり、買いかぶり過ぎではないかいう印象を与えてしまう可能性があります。
そのため、使うシーンやシチュエーションによって使うかどうかを判断しましょう。
もしも、何かを教えてもらったけれど「勉強」というほどしっかりした内容ではないという場合、またちょっとしたことを教えてもらったという際には、「大変参考になりました」「大変勉強になりました」というのは、大げさです。
その場合には、「ありがとうございます」という感謝の気持ちに重点をおくフレーズを使うのが得策です。
「大変参考になりました」のフレーズを英語で表現したい場合には、「参考」という言葉にとらわれず、教えてもらったことに対して感謝の気持ちを述べる
「Thank you for the information.(情報をありがとうございます。)」
「Thank you for letting me know.(大変勉強になりました。)」
などを使うと良いでしょう。
例文
「大変参考になりました」は、相手からちょっとしたことを教えてもらった時に使いやすいフレーズです。
また、自分のやり方や考え方が間違っていないかどうか確認させてもらう際にも活用できます。
知らないことを教えてもらった時に使うのは相手に対して失礼となってしまいますが、自分の間違いを相手から指摘された時には、「大変参考になりました」を使うと良いでしょう。
また、自分のやり方や考え方に対してちょっとしたアドバイスをもらった際にも、「大変参考になりました」を使うことができます。
自分「田中部長、この工程に関するプロセスを教えていただけないでしょうか?」
上司「それはね(指導する)。分かったかな?」
自分「はい、大変勉強になりました。どうもありがとうございます。」
このようなシチュエーションでは、自分が全く知らない知識を教えてもらっているわけですから、「大変勉強になりました」を使うのが最適です。
しかし、ちょっとした間違いや勘違いを訂正してもらった場合には、「勉強」ではなく、「参考」という言葉の方が適しています。
上司「山田君、ここはこういう感じにしたほうが良いと思うよ。」
自分「大変参考になりました。ご指導、ありがとうございます。」
もしも、些細なことでも上司に対して「大変参考になりました」というフレーズを使うことに抵抗がある場合には、「勉強」とか「参考」の代わりに「指摘」という言葉を使うという方法もアリです。
自分「田中部長、明日の会議は3時からで良かったでしょうか?」
上司「いや、時間変更になったから2時からだよ。」
自分「了承いたしました。ご指摘ありがとうございます。」
例文(上司あて)
上司に対しては、「大変参考になりました」に含まれている「参考」という言葉は失礼に当たるため、できるだけ使わないようにしたいものです。
特に、自分が知らないことを教えてもらったり指導を受けた時には、「大変参考になりました」と言うと、上司を激怒させてしまいかねません。
この場合には、「参考」ではなくて「勉強」という言葉を使い、「大変勉強させていただきました。どうもありがとうございます。」とするのが最適です。
尊敬語や謙遜語などの敬語には、上司に対して使う敬語を取引先や顧客など社外の人に対しても適用できるものがたくさんあります。
この「大変参考になりました」に関しては、社外の人に対して使っても失礼には当たりません。次のように使えます。
自分「この部分の対策につきましては、弊社ではこのように考えておりますが、御社ではどのように対応されていらっしゃいますか?」
取引先「当社は、XXもしていますが、XXの取り組みにも力を入れております。」
自分「大変参考になりました。どうもありがとうございます。」
上司に対して「大変参考になりました」を使うのは、一般的には失礼だと言われています。
しかし、時と場合によっては、使っても失礼に当たらないことがあります。
田中部長、この度はご退職おめでとうございます。
思えば私が新入社員として入社したばかりの頃には、田中部長から良くご指導をいただきました。
あの頃の指導は大変勉強になり、今でも参考にさせていただいております。
例えば、上司の送別会でこのように述べても、「参考」という言葉に反応して上司が激怒するとは考えにくいでしょう。
過去の指導に対して感謝の気持ちを述べ、現在でも指導されたことを念頭に入れて、自分が意思決定をする上で参考にしていると言っているわけです。
この使い方は間違ってはいませんし、相手が上司でも失礼だと受け止められる心配はありません。
英語で「大変参考になりました」を表現する場合には、
「Thank you for ~」
と具体的に教えてもらった内容と共に感謝の気持ちを伝えても良いですし、
「Thank you for your mentor.(ご指導ありがとうございます)」
「Thank you for your guidance.(大変勉強になりました)」
のように、普段からその人の指導に感謝しています、という気持ちを伝えるという方法も良いでしょう。
例文(部下あて)
「大変参考になりました」は、シチュエーションによっては目上の人に対して使うと失礼に当たることがあります。
しかし、部下に対しては使いやすい言葉です。
ただし、部下に対して「大変参考になりました」というのは、少し丁寧過ぎる感があるでしょう。
相手とのコミュニケーションの中で自然になるように、フレーズを少しアレンジするのがおすすめです。
- 「どうもありがとう。とても参考になりました。」
- 「なるほど。とても参考になりました。検討します。どうもありがとう。」
「大変参考になりました」を定型文として、どんなシチュエーションでもそのまま使おうとすると、言葉の選び方は間違っていなくても、違和感や不自然さが出てしまうかもしれません。
注意したほうが良いでしょう。
英語で部下に対して使える「大変参考になりました」のニュアンスを持つ表現は、間違いを指摘された時に使える
「Thank you for pointing out.(指摘してくれてありがとう)」
や、
「とても勉強になりました」に相応する「Thank you for the information.」
などがあります。
相手が部下なので、あまり丁寧過ぎると不自然ですが、指摘してくれたり情報を共有してくれたことに対して感謝の気持ちを述べることは、忘れないようにしたいものです。
例文(同僚あて)
「大変参考になりました」は、自分よりも目上に当たらない同僚に対しては、使っても失礼にはなりません。
しかし、もしも自分が知らなかったことを同僚から教わった場合には、「参考」という言葉ではなくて「勉強」という言葉を使うのが良いでしょう。
自分が知らなかったことを教わり、「大変参考になりました」と言うと、あたかも自分にも知識があり、あくまでも参考程度に話を聞いた、というニュアンスに受け取られてしまいます。
それでは、同僚に対しても失礼です。
もしも自分なりの考え方があり、同僚から別の意見を提案された時には、話を聞いた上で「大変参考になりました」と言うのはアリです。
自分とは違う意見を理解して納得し、前向きに検討するというニュアンスが含まれているため、言われた同僚にとって悪い気はしないでしょう。
まとめ
ビジネスの歴史においては、「大変参考になりました」というフレーズを使う機会がたくさんあるものです。
同僚や部下に対して使うのは不自然ではありませんが、目上の人に対して使う場合には、失礼にならないように「大変勉強になりました」とするのがおすすめです。
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